Guideline on positioning and early mobilisation in the critically ill by an expert panel
- https://doi.org/10.1007/s00134-024-07532-2
ドイツとオーストリアの専門家から作成されたガイドラインであるが、日本でのリハビリにも参考になると思われます。
推奨事項を記載していきます!
Introduction
ICUに入院している成人の重症患者の場合、長期間の不動状態は、集中治療室で獲得した筋力低下(ICUAW)、筋肉量の低下および機能の低下、せん妄、認知機能の低下、生活の質の低下など、いくつかの短期および長期の後遺症と関連しており、早期の運動によって最小限に抑えられる可能性がある。
神経筋系の電気生理学的変化は、入院後48時間という早い段階で発生しうる。神経筋経路内の病態生理学的変化は、筋肉消耗系のアップレギュレーションを促進し、ICUAWにつながる。その結果、筋肉量が減少するが、重要なことに、機能の低下とインスリン抵抗性が生じる。重症患者に共通する併存疾患である炎症は、これらの影響を増幅させる。
早期離床は、ICU 入室後 72 時間以内に開始される離床と定義された。
重症患者の体位に関する推奨事項
1.1 気管挿管患者では、血行動態の副作用や褥瘡リスクの増加の可能性を考慮しながら、上半身を40°以上挙上することを推奨する。(LoE 1)
1.2 ICPが上昇した患者では、CPPに最も好ましい効果を得るために上半身挙上を行うことを推奨する。(LoE 4)
1.3 腹腔内圧が上昇している患者やそのリスクがある患者では、膝と股関節を屈曲させて上体を挙上することは避け、上体を挙上する場合は反トレンデレンブルグ体位を推奨する。(LoE 3)
1.4 肺損傷を伴わない肺合併症の予防のために側臥位を推奨するか否かについては、判断できない。(LoE 3)
1.5 片側肺損傷患者を人工呼吸器で呼吸させる場合、ガス交換を改善するために、健康な側を下にして(良好な肺を下にして)約90°の横向きの姿勢をとることを推奨する。(LoE 3)
1.6 不適切な姿勢である平らな仰向け姿勢を避けるために、定期的に姿勢を修正することを推奨する。(LoE 5)
1.7 持続的なlateral rotation therapyは行わないことを推奨する。(LoE 2)
2.1 ARDSおよび動脈血酸素化障害(PaO2/FiO2 < 150 mmHg)を伴う侵襲的人工呼吸器を装着した患者には、腹臥位を推奨する。(LoE 1)
2.2 早い段階で腹臥位を検討し、適応があればすぐに実施することを推奨する。(LoE 1)
2.3 少なくとも12時間、できれば16時間は腹臥位をとることが推奨される。(LoE 1)
2.4 腹臥位の換気には、一回換気量の制限、デリクルートメントの防止、自発呼吸要素の統合など、一般的に推奨されている最適化された換気の原則を適用することを推奨する。(LoE 1)
2.5 腹臥位にする前に、患者の血行動態を安定させ、容積状態を最適化することを推奨する。カテコールアミンの使用は腹臥位の禁忌ではない。(LoE 5)
2.6 腹部手術後の患者、腹部病変のある患者、腹部肥満の患者では、利点(酸素化の改善)とリスク(腹腔内圧の上昇による手術合併症、急性腎不全、低酸素性肝炎のリスク)を個別に考慮した上で、腹臥位を検討することを推奨する。(LoE 4)
2.7 ICP上昇のリスクがある患者は、腹臥位中では、継続的にまたは綿密に監視することを推奨する。頭は中央の位置に配置し、横方向の回転は避けてください。(LoE 5)
2.8 腹臥位は、以下の禁忌がある場合、リスクと利点を考慮した上で、個々の症例でのみ実施することを推奨する。(LoE 5)
- open abdomen
- 脊椎不安定性あり
- ICP上昇
- 血行動態に影響を及ぼす不整脈
- ショック
2.9 腹臥位での酸素化の改善が持続する場合(体位変換後4時間:PaO2/FiO2 ≥ 150、PEEP ≤ 10 cm H2O、FiO2 ≤ 0.6)は、腹臥位を終了することが推奨される。(LoE 2)
2.10 少なくとも2回腹臥位をしたが改善を認めない場合は、腹臥位療法を中止することを推奨する。(LoE 5)
2.11 不完全な腹臥位よりも完全な (180°) 腹臥位を推奨する。不完全な腹臥位では臨床結果が改善されるという証拠はない。(LoE 2)
2.12 褥瘡の発症リスクを最小限に抑えるために、うつ伏せ姿勢の際には褥瘡の危険がある部分を注意深く観察することを推奨する。(LoE 1)
2.13 COVID-19および急性低酸素性呼吸不全に対してNIVを装着している患者には、覚醒時の腹臥位を推奨する。(LoE 1)
2.14 COVID-19に感染していないNIVを装着している患者に対して、覚醒時の腹臥位を推奨することも、推奨しないこともできない。(LoE 5)
2.15 覚醒時の腹臥位の持続時間については推奨できない。(LoE 5)
2.16 VV ECMO使用しているARDS患者には腹臥位をとることを推奨する。(LoE 2)
離床に関する推奨事項
3.1 ICU入院後72時間以内にICU患者の早期離床を開始することを推奨する。(LoE 1)
3.2 病院管理者は、これらの勧告に沿って(早期の)離床を可能にするための人員と物資の条件を整えることを推奨する。(LoE 5)
3.3 以前から機能的に自立しており、禁忌のない重症患者全員に早期離床の実施を推奨する。(LoE 1)
3.4 重症患者でICU入室前に機能的に自立しており、禁忌がない患者には早期離床を推奨する。(LoE 3)
3.5/7 専門職チームと相談し、禁忌がない場合はCRRTまたはECMO療法で患者を動かすことを推奨する。(LoE: CRRTでは2、ECMOでは3)
3.6 くも膜下出血または脳室外ドレナージを受けた患者は、潜在的なリスクと利点を考慮し、多職種による協議を行った上で、離床することを推奨する。(LoE 3)
3.8 医学的に必要な不動(immobilization)の明確な処方を推奨する。(LoE 5)
3.9 呼吸および心血管の予備力が十分にある患者には、離床を推奨する。ただし、離床の禁忌と考えられる絶対値について、現時点ではエビデンスに基づいた推奨を行うことはできない。(LoE 5)
3.10 臨床的判断により患者にリスクをもたらす場合は、離床を中止することを推奨する。基準は以下の通りである。(LoE 5)
- 酸素化低下(SpO2 86%未満)
- baselineからのHRが30%を超えて上昇
- baselineからのsBPが40mmHg以上上昇
- baselineからのdBPが20mmHg以上上昇
- MAP<60mmHg
- 治療を必要とする新規または悪化した不整脈
- 離床開始時と比較して意識レベルの増悪
- 疼痛コントロールによっても改善しない痛み
3.11/14 自動・他動運動要因による離床の実行にはプロトコルベースのアプローチを推奨する。(LoE: プロトコール1, 運動要因2)
3.12 安全基準(肺疾患や心血管疾患など)を離床プロトコルに組み込むことを提案する。(LoE 2)
3.13 離床の準備には以下のことを提案する。(LoE 5)
・患者に離床することを伝え
・十分な人員を配置し
・気管挿管チューブ、静脈ライン、その他のドレーンの確保/延長をする
3.15 毎日の離床時間(長さ)については推奨できない。(LoE 5)
3.16 可能な限り高いレベルまで段階的に離床することを推奨する。(LoE 1)
3.17 痛み、不安、興奮、せん妄の管理、人工呼吸器を装着した患者のSBTの実施を含む治療バンドル(ABCDEFバンドルなど)に(早期)離床を統合することを推奨する。(LoE 2)
3.18 離床とタンパク質摂取量の増加を組み合わせることについては、推奨も反対もできない。(LoE 5)
3.19 (早期の)離床に親族が関与することの是非については、私たちは推奨できない。(LoE 5)
移動補助装置とロボットに関する推奨事項
4.1 臥位でのサイクリングと(早期の)離床との組み合わせについて、推奨も反対もできない。(LoE 2)
4.2 機能訓練が十分に不可能な場合にのみ、仰向けでのサイクリングを(早期の)離床の一部として検討することを推奨する。(LoE 1)
4.3 頭蓋内圧上昇のリスクがある患者では、仰向けサイクリングマシンを使用する際に頭蓋内圧をモニタリングすることを推奨する。(LoE 2)
4.4 補助装置(傾斜テーブル、体重を支えるトレッドミルなど)やロボットの使用については推奨できない。(LoE 5)
神経筋電気刺激に関する推奨事項
5.1 重症患者の(早期)運動療法には神経筋電気刺激を考慮することを提案する。(LoE 1)
5.2 神経筋電気刺激を使用する場合、頭蓋内圧モニタリングをしている患者では、頭蓋内圧を継続的にモニタリングすることを推奨する。(LoE 2)
まとめ
重症患者における早期離床は非常に重要です。早期のリハビリ介入によりADLを落とさぬようにICUを退室していくのが目標ですね。早期離床・リハビリテーション加算もありますし、リハビリの注目度は高いです。
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