Distinguishing community-acquired bacterial and viral meningitis: Microbes and biomarkers
- J Infect. 2024 Mar;88(3):106111.
- doi: 10.1016/j.jinf.2024.01.010.
- PMID: 38307149.
細菌性髄膜炎とウイルス性髄膜炎の鑑別についてのレビューがありましたのでまとめます。
疫学
細菌性髄膜炎は、抗菌薬による治療にもかかわらず5~30%の致死率を示す壊滅的な疾患であり、難聴、発達遅延、運動障害を含む長期的な後遺症のリスクも大きい。
ウイルス性髄膜炎の迅速な診断は、入院率、入院期間、費用、不必要な抗菌薬投与が抗菌薬耐性や宿主マイクロバイオームに及ぼす有害な影響を減らすのに役立つ。
過去数十年の間に、インフルエンザ菌b型(Hib)に対するタンパク質-多糖体結合型ワクチンや、肺炎球菌および髄膜炎菌に対する血清型/被膜群特異的ワクチンが導入されたことで、市中感染型細菌性髄膜炎の発生率は着実に減少している。またムンプス髄膜炎の発生率もワクチン普及により大幅に減少している。
現在、核酸増幅検査(NAAT)の利用が始まったことで、エンテロウイルスなど一部の神経親和性ウイルスの検出率が高まっている。高度に多重化されたNAATやシーケンシングに基づくメタゲノムアッセイにより、あらかじめ特定された少数の限られた標的病原体の検出に依存しない、臨床症候に基づく高感度診断アプローチが可能になるが、NAATの感度が高いことが、結果の解釈を複雑にしている可能性がある。発熱した小児の血液および呼吸器分泌液にマルチプレックスPCR NAAT診断を適用したところ、ほとんどの一般的な細菌性およびウイルス性病原体について、陽性検出は病因を特定するには不十分であることが判明している。ウイルスおよび細菌の陽性結果は、疾患の原因がウイルス性または細菌性であると判断された患者に限定されず、多くの病原体は健常の対照群でも高頻度に検出されたためである。
Clinical Prediction Rule/検査
★Clinical Prediction Rule
CPRとして使えそうなのは以下がある。
<Bacterial Meningitis Score(生後29日-18歳、ただしLP前に抗生剤投与された患者では検証されていない)>
以下のいずれも満たさなければ、very low riskである(感度98.3%、NPV99.9%)(JAMA. 2007;297:52-60.)。なお、メタアナリシスでもこのCPRの感度99.3%、NPV99.7%であった(Arch Dis Child. 2012;97:799-805.)。
- CSFグラム染色陽性
- CSF好中球絶対数≧1000 cells/μL
- CSFタンパク質≧80mg/dL
- 末梢血好中球絶対数≧10000/μL
- 痙攣発作あり
<髄膜炎リスクスコア(16歳以上のCSF WBC10以上でCSFグラム染色陰性患者)>
以下のいずれも満たさなければ、細菌性髄膜炎でない(感度99.6-100%、特異度34-41.2%)(Clin Microbiol Infect. 2023;29:360-365.)。
- 38度以上の発熱
- 血液中WBC100000/μL
- CSFのWBC>2000/mm3
- CSFの多核球>1180/mm3
- CSFの血糖<18mg/dL
- CSFの蛋白>220mg/dL
★NAAT以外の個別検査
<CSF中の肺炎球菌抗原検査>
肺炎球菌性髄膜炎を検出するにあたり、CSF中の肺炎球菌抗原検査を使用した場合、感度99.5%、特異度98.2%であった(Clin Microbiol Infect. 2023;29:310-319.)
<血中エンテロウイルスPCR検査>
2歳未満の小児では、診断率が高いことから、血液からのエンテロウイルスPCR検査施行が良い(Lancet Infect Dis. 2018;18:1385-1396.)。
<糞便中のエンテロウイルスPCR検査>
培養陰性の成人の髄膜炎では、特に症状が2日以上続いている場合、便からのPCR検査でエンテロウイルスの検出率が向上する(Clin Infect Dis. 2005;40:982-7.)。
<パレコウイルスPCR検査>
髄液、血液、糞便検体でPCR検査施行する。髄膜炎が疑われる生後12ヵ月以下の乳児が対象。
<髄液中の乳酸値>
髄液中白血球5以上かつ髄液グラム染色陰性患者において、CSF Lac≧3.8mmol/Lでは感度94%、特異度97%で細菌性orウイルス性を鑑別できる(Crit Care. 2011;15:R136.)。ただ乳酸値のカットオフは下記プロカルシトニンと同様に3.5-3.9まで研究によって幅がある。
<血中プロカルシトニン>
細菌性、ウイルス性を見分けるのに最適なカットオフは研究によって様々で、0.28-0.5ng/mlあたりが有用か。
<sTREM-1>
カットオフ値20 pg/mLの細菌性髄膜炎に対する感度は73%、特異度は77%であったという報告はあり( Intensive Care Med. 2006;32:1243-7.)。
以下は検査まとめである。
その中で検体採取前の抗生剤先行投与が、検体の結果に影響をどの程度与えるかは不明であるが、その程度については以下の通りである。
まとめ
私の勤務先が市中病院ゆえ実臨床でつかるモダリティが限られており、レビューで書かれていたものを紹介しきれていません。ただ、ある意味実臨床で今使えそうなCPRや検査は記載してみました。細菌性髄膜炎はあまりみなくなったなぁというのは肌感覚であります。
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