Intensive Ambulance-Delivered Blood-Pressure Reduction in Hyperacute Stroke
- N Engl J Med. 2024 May 16.
- doi: 10.1056/NEJMoa2314741.
- PMID: 38752650.
脳卒中が疑われる患者に対して、救急車内での超早期降圧が3ヶ月後のmRSを改善するのか、というTrial(INTERACT4 trial)です。
Introduction
- 急性期脳卒中患者における血圧コントロールの最適なアプローチ方法は不明
- 血圧を下げるための集学的治療を組み込んだバンドルケアプロトコルは、脳出血患者に有益であることが示されているが、降圧のみを評価した試験では結果の一貫性は得られていない。
- 脳出血に対する降圧治療が早期に開始されれば、降圧による効果(血腫の拡大抑制、機能的転帰の改善など)が高まる可能性がある(発症より1,2時間の間に脳出血は悪化する可能性がある)
PICO
P:2020/3-2023/8中国の18歳以上の成人で上肢の運動障害を含むFASTスコア(顔面下垂、上肢挙上不可、不明瞭な言語、EMSを呼ぶまでの時間)が2以上の患者、BP150mmHg以上、症状発生もしくは最終健常確認から2時間以内であること。この全てを満たすもの。
I:降圧群(98.2%が降圧治療としてウラピジルが使用された。ウラピジル25mは1分かけてIV、血圧が上昇したままであれば5分後に1回のみ再投与可)
C:通常血圧群
O:90日後mRS
Method
【研究デザイン】
- 中国51病院で行われた、open-label, randomized trial, with blinded outcome assessment
- Inclusion:18歳以上の成人で上肢の運動障害を含むFASTスコア(顔面下垂、上肢挙上不可、不明瞭な言語、EMSを呼ぶまでの時間)が2以上の患者、BP150mmHg以上、症状発生もしくは最終健常確認から2時間以内であること。この全てを満たすもの。
- Exclusion:昏睡状態(触覚/言語刺激に反応なし、つまりGCS5未満など)、重篤な併存疾患(がん、慢性気道疾患、重度の認知症、重症心不全、脳卒中発症前に日常生活に援助が必要な障害あり)、てんかんor症状出現時の痙攣、7日以内の頭部外傷歴、低血糖(50mg/dL未満)
- 患者は病院前の降圧を行う群(介入群)と通常の血圧管理を行う群(病院到着後に血圧管理を開始する群)に1:1の割合で無作為に割り付けられた。
- 無作為化は、地域(中国東部vs西部)、年齢(65歳以上vs65歳未満)、FASTスコア(3点以上vs2点)の層別化因子のバランスをとるための最小化アルゴリズムを含む中央ウェブベースシステムを用いて行われた。
- 介入群に割り付けられた患者については、無作為化後直ちに治療を開始し、30分以内に収縮期血圧を130~140mmHgとし、病院に到着するまでこの血圧を維持することを目標とした。ウラピジル25mを1分かけてIV、血圧が上昇したままであれば5分後に1回のみ再投与可、とした。
- 通常治療に割り付けられた患者では、収縮期血圧が220mmHg以上、または拡張期血圧が110mmHg以上の場合にのみ、血圧を下げる治療が救急車の中で行われた。
- 収縮期血圧130mmHgが治療中止の閾値とされた。
- 中国では、病院内での収縮期血圧の目標値は、急性脳内出血患者では140mmHg未満、急性虚血性脳卒中患者では140~160mmHgが推奨されている。
- 90日後の追跡評価は、訓練された認定されたスタッフにより、治療群に関係なく、対面または電話で行われた。
【Primary outcome】
- 90日後のmRS
【Secondary outcome】
- 90日時点でのmRS評価(0-2点vs3-6点)
- 1,7日後のNIHSS
- mRS3-5点
- 7日目までの退院
- 90日時点での生活状況(自宅or施設)
- 90日後のEQ-5Dによる健康に関連するQOL
- 脳出血を認めた患者で、来院時及び24時間後の血腫量
【安全アウトカム】
- 重篤な有害事象
【解析計画】
- 患者の6%が脳卒中mimicを呈し、5%の患者で主要転帰の評価が不可能であるという仮定のもとで、2320人のサンプルサイズにより、介入群では通常ケア群よりも機能的転帰不良のオッズが22%低いことを検出する90%の検出力(共通オッズ比、0.78)が得られると計算
- 主要アウトカム解析はITT解析
- primary outcomeの感度分析は、脳卒中前の機能/性別/症状発現からランダム化までの時間、の共変量について追加調整を行った
- 多重置換の使用は計画されたが、欠損データの量が事前に規定された閾値である5%以下であったため実施されなかった
- 脳虚血(脳卒中またはTIA)または非構造的原因の脳内出血を有する患者を含み、脳卒中mimicの患者/構造的原因の脳内出血を有する患者/くも膜下出血を有する患者を除外した修正ITT解析も行った
【解析】
- 一次解析は、順序ロジステイック回帰で行った
- モデルには、群割付けと層別変数を固定効果として含み、被験者内相関はランダム効果または反復効果として説明した
- 統計的有意性を示すにはP<0.05を使用
Result
【患者】
- 2020年3月20日から2023年8月31日の間に、中国で合計2425人の患者が無作為化と治療を受け、1215人が血圧降下のための病院前治療を受ける群に、1210人が通常ケアを受ける群に割り付けられた。
- 介入群では9人、通常ケア群では11人の患者から同意を得ることができず、介入群では1人の患者が同意を撤回した。
- したがって、ITT集団は介入群1205例、通常ケア群1199例であった。主要転帰データは2362例(98.3%:介入群1185例、通常ケア群1177例)で入手可能であった。41例(介入群20例、通常ケア群21例)は連絡がとれず、通常ケア群の1例は参加を辞退した。
- 平均年齢は70±13歳で、61.7%が男性であった。
- 症状発現から無作為化までの時間の中央値は61分(IQR41-93)、無作為化時の平均収縮期血圧は178±21mmHgであった。
- 画像診断で脳卒中と確定診断された2240例のうち、1041例(46.5%)が出血性脳卒中であり、そのうち1029例(98.8%)が脳出血、12例(1.2%)がくも膜下出血であった。
- 脳梗塞は1199例(53.5%)で、うち907例(75.6%)は頭蓋外・頭蓋内大血管のアテローム性閉塞や心塞栓症による脳梗塞で、TIAは53例(4.4%)であった。
【治療介入】
- 救急車の中で降圧治療を受けた患者の割合は、介入群が通常ケア群よりも高く(89.5%[1078例]対9.7%[116例])、降圧治療を受けた患者の98.2%(1172例)にウラピジル静注療法が行われた。
- 病院到着時の平均収縮期血圧は、介入群で159±26mmHgであったのに対し、通常ケア群では170±27mmHg、24時間後の平均収縮期血圧は140±18mmHgであったのに対し、通常ケア群では140±19mmHg、7日後の平均収縮期血圧は136±17mmHgであったのに対し、通常ケア群では138±18mmHgであった。
【主要評価項目】
- 90日後のmRSは、介入群の患者と通常治療群の患者の間で有意な差はなかった(共通オッズ比、1.00、95%CI、0.87-1.15)
- 病院前降圧の効果には脳卒中の種類に応じて差があり、出血性脳卒中患者では機能的転帰が不良であるオッズ比が低く(共通オッズ比、0.75、95% CI、0.60-0.92)、脳梗塞患者ではオッズ比が高かった(共通オッズ比、1.30; 95% CI、1.06~1.60)。
【その他のoutcome】
- 介入群の患者は、24時間後および7日目の時点で、通常のケア群の患者と同様の程度の神経障害を有していた。
- また、90日時点での死亡/障害(mRS3-6)/障害のみの発生率、EQ-5D-3L スコア、退院のタイミング、生活環境(自宅 [本人または家族] での生活、または施設での生活 [病院] 、介護施設、またはその他])で、両群類似していた。
【safety outcome】
重篤な有害事象の発生率は介入群と通常治療群の間で有意な差はなし(27.5% vs 28.7%)。
Discussion
【結果のまとめ】
- 中国の救急隊員によって特定された急性脳卒中と血圧上昇を患う成人を対象としたこのRCTでは、収縮期血圧目標である130~140mmHgに到達するために静脈内降圧治療を早期に開始しても、通常の治療(病院到着時に血圧管理を開始)と比較して90日後の機能的転帰には全体的な影響はなかった。
- しかし、症状発現後2時間以内に病院前で集中的な降圧治療を開始すると、出血性脳卒中患者では機能不良の転帰が起こる可能性が低く、脳虚血患者ではその可能性が高かった。
- INTERACT2は脳出血患者でBP150-220mmHg、発症6時間以内の患者に対して、7日間BP130-139mmHgにコントロールをした群が予後改善効果を認めた。INTEACT3では、発症6時間以内の脳出血患者に対して、血圧、血糖、体温、凝固というバンドルケアにより、6ヶ月後のmRSは転機良好であった。
【Limitation】
- 中国での研究(北米や欧州に比べて脳出血が多い)
- 医師がprehospitalの救急車内で介入しているが、そのシチュエーションでないと再現性ない
- ウラピジル投与の外的妥当性は疑問
内的妥当性
無作為割り付け:OK
選択バイアス:なさそう
脱落率:2.5%
マスキング:実施医は治療を把握。outcome評価者はマスキングされている。
ベースライン:同等
ITT解析:されている
実際の介入(偏りはないか):方法通りであるが、介入群の血圧目標は130-140にもかかわらず平均は159とやや高い。
サンプルサイズ計算:問題なし
報告バイアス:なし
外的妥当性
- 中国での研究。
- ウラピジル投与の外的妥当性は疑問。
- 医師がprehospitalの救急車内で介入しているが、そのシチュエーションでないと再現性ない。
まとめ
INTERACT4が出ましたが、prehospital settingでの脳卒中疑いに対する降圧は脳出血患者には良い転機ですが、脳梗塞では真逆になってしまいますね。しかも、介入群の平均血圧159とやや高めであり、やや甘めの降圧になっています。しっかりと降圧した場合、脳出血患者のmRSがより良くなるかもしれないし、脳梗塞患者のmRSがさらに悪くなるかもしれないしわかりませんね。
実臨床では220mmHg以上なら投与しますが、それ以下なら診断がついてから降圧検討というところでしょうか。
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