動脈瘤性くも膜下出血(aSAH)における遅発性脳虚血(DCI)の早期認知のための脳波

自分もあまり経験はありませんが、文献から脳波で認知するDCIについてまとめてみました。間違っていることがあったらコメント頂けますと幸いです。

以下の論文中心です。

The Utility of Quantitative EEG in Detecting Delayed Cerebral Ischemia After Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage

  • J Clin Neurophysiol. 2022 Mar 1;39(3):207-215. 
  • doi: 10.1097/WNP.0000000000000754.
  • PMID: 34510093
目次

DCIに関連する脳波

  • Alpha Power 減少
  • Relative Alpha Variability: RAV減少
  • Alpha/Delta Ratio: ADR低下
  • その他:Alpha-Theta/Delta Ratio: AT/D低下、てんかん性異常波形、局所的な徐波下、速波の消失など

Alpha Power 減少

アルファ周波数帯域(8-12、8-12.5、8-13Hzとして様々に定義される)であるアルファパワーの低下が、血管攣縮の予測因子である。アルファパワーの5時間継続するパワーの40%の減少はDCI検出の最適なカットオフを示す(感度89%、特異度77%)脳波の変化は血管攣縮やDCIが検出されるより2,3日前に検出される(Clin Neurophysiol. 2015;126:1514-23.)。

この研究では、0.08Hzのハイパスフィルターと86Hzのローパスフィルターを用い、256Hzのサンプリングレートとした。F4-C4(F3-C3)とT4-P4(T3-P3)は前大脳動脈(ACA)と中大脳動脈(MCA)の領域を表し、P4-O2(P3-O1)は椎骨脳底循環の変化を捉えているという仮説を立て、F4-C4, T4-P4, P4-O2; F3-C3, T3-P3, P3-O1を使用した。

Relative Alpha Variability: RAV減少

RAVは、1-20Hzの周波数全体に占める6-14Hzの割合として定義される。RAVの減少はDCIの早期認知に有用であり、血管攣縮の平均2.9日前にRAVの減少を認める症例は半数程度ある(Electroencephalogr Clin Neurophysiol. 1997;103:607-15.)。

この研究では、F4-T4、T4-P4、P4-O2、F3-T3、T3、P3、P3-O1で電極を配置し、フィルターは0.3Hzと35Hzに設定。

relative alphaの平均ベースラインを12時間のrelative alphaの中央値としており、中央値のベースラインからの逸脱の大きさと頻度を用いてスコアを割り当てている。

ベースラインからの逸脱が1時間に1回または中央値の15%以上の場合をExcellent(4)、10%以上の逸脱が4時間に1回以上の場合をGood(3)、2%以上の逸脱が少ない場合をFair(2)、2%以上の逸脱がない場合をPoor(1)としており、1つまたは複数のモニターチャンネルのRAVスコアのうち、最も悪いものをその12時間のスコアとしている。2つ以上のチャンネルでRAVが1(例えばgoodからfairへ)変化した場合、有意な減少とみなしている。

Alpha/Delta Ratio: ADR低下

DCIを有する患者では、ADRが低下する。ADRの減少中央値は24%であった。臨床的に有用なカットオフは、ベースラインからADRが10%以上減少した6回の連続記録 (感度100%、特異度76%)、および50%以上減少した単一測定 (感度89%、特異度84%)である(Clin Neurophysiol. 2004;115:2699-710.)。

まとめ

DCIの検出に、経頭蓋カラードプラ法(Transcranial color flow image : TCCFI)はよく施行していましたが、感度38%と非常に低く(以下のリンク参照ください)、脳波の有用性があることがわかりますね。自施設でも積極的に利用していきたいです。

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