Video versus Direct Laryngoscopy for Urgent Intubation of Newborn Infants
- N Engl J Med. 2024 May 5.
- doi: 10.1056/NEJMoa2402785.
- PMID: 38709215.
新生児の緊急挿管におけるビデオ喉頭鏡と直接喉頭鏡の 初回挿管成功率に関する論文がNEJMから出ました。
Introduction
- 早産児における挿管の要因は、サーファクタント投与と換気不全である。
- 研修医の労働時間の減少は、新生児挿管の熟練度の低下と関連している。
- 新生児に対する挿管において、直視型喉頭鏡による初回挿管成功率は50%未満であり、複数回の挿管tryは酸素化低下、徐脈、口腔外傷などの有害事象が増加する。
- 新生児の挿管におけるビデオ喉頭鏡の有効性と安全性を確認するには、RCTが必要がある。
PICO
P: 2021/9-2023/11アイルランドのダブリンの国立産科病院(分娩室(陣痛室、手術室)またはNICU)で挿管された新生児
I: ビデオ喉頭鏡による挿管
C: 直視型喉頭鏡による挿管
O: 初回挿管施行での成功(CO2検出により判定)
Method
【手技者の分類】
・Doctors training in pediatrics
アイルランドで医学部を卒業した後、卒業生は1年間のインターンシップ(6ヶ月の内科と6ヶ月の外科)を修了し、アイルランド医師会に正式に登録される。インターン期間中に新生児科のローテーションはない。
小児科の基礎専門医研修(BST)は2年間で、ローテート4回で構成され、そのうちの1回が新生児科である。BSTでは新生児の挿管経験はほとんどない。
BSTを修了した医師は、5年間の高度専門医研修(HST)に進むことができ、最初の2年間のうち1年間を新生児科で過ごす。この期間中、HSTの医師は少なくとも6回の新生児挿管を行うことが期待されている。挿管の経験は医師によって異なり、一部はビデオ喉頭鏡を使用している。
この研究では、小児科BSTおよびHSTの医師は、基本的に新生児の挿管経験がないため、”Doctors training in pediatrics”と定義する。
・Doctor training in neonatology
小児科でHSTを2~3年学んだ後、新生児科でHSTを始める医師もいる。
新生児科HSTの医師は通常、主に直接喉頭鏡を使って20~40人の新生児を挿管した経験があり、ビデオ喉頭鏡を使用したことがある者もいる。この研究では、これらの医師を”Doctor training in neonatology”と定義する。
・Neonatologist
Neonatologistとは、100人以上の新生児を挿管したことのある独立した臨床医と定義する。彼らは直接喉頭鏡による挿管を学び、この研究以前にも時折ビデオ喉頭鏡を使用したことがあるかもしれない。
【デザイン】
- アイルランドのダブリンの国立産科病院(分娩室(陣痛室、手術室)またはNICU)の単一施設で行われたRCT
- 妊娠週数32週未満、32週以上で層別化
- 群の割り付けスケジュールは乱数表を用いて4つのブロックに分けられた。グループ割り当てはカードに書かれ、密封された不透明な連番の封筒に入れられ、NICUに保管された。NICUの新生児に挿管を行うことが決定されると、適切な層の無作為化順序に従って次の封筒が開けられた。多胎妊娠の新生児は個別に無作為化を受けた。
- Inclusion:分娩室(陣痛室、手術室)またはNICUで挿管が試みられた新生児(妊娠月齢は関係なし)
- Exclusion:上気道に異常あり
- 介入群:ビデオ喉頭鏡による挿管、対象群:直視型喉頭鏡による挿管
【Trialの流れ】
- 無作為化の封筒を開ける前に、その場にいた最も年長の医師が最初に挿管を試みる医師を決定
- 挿管は通常、doctor training in pediatrics or neonatologyが最初に試み、最大3回まで試みることができた
- 緊急性により不可能な場合を除き、投薬が行われ、通常、フェンタニル(2μg/kg)、アトロピン(20μg/kg)、スキサメトニウム(2mg/kg)が静脈内投与された。分娩室での挿管の前には、静脈へのアクセスがすぐにはできなかったため、薬剤は投与しなかった。
- すべての挿管は経口経路で行われた。新生児の出生体重に応じて、非カフ気管内チューブ(ETT)を使用した(体重1000g未満の新生児には2.5mm、1000~2000gの新生児には3.0mm、2000~4000g超の新生児には3.5mm、など)。スタイレットの有無は医師の裁量で行われた。
- ビデオ喉頭鏡群では、ミラー喉頭鏡ブレード(体重1500g未満の新生児にはサイズ0、1500g以上の新生児にはサイズ1)が使用され、高解像度の8インチモニターで気道を可視化した。直接喉頭鏡検査群では、標準喉頭鏡(HEINE、Optotechnik社製)とストレート喉頭鏡ブレード(体重1000g未満の新生児にはサイズ00、1000~3000gの新生児にはサイズ0、3000g以上の新生児にはサイズ1)を用いた。
- 最初の挿管に使用する喉頭鏡の種類以外のすべての処置の決定は、担当臨床医の裁量に任された。しかし、すべての挿管に両方の器具が使用可能であったが、無作為に割り付けられた器具以外へのクロスオーバーは強く推奨されなかった。代替器具の使用は、新生児科医による試みが失敗した後、または例外的な状況でのみ許可された。
【Primary outcome】
- 初回挿管施行での成功(CO2検出により判定)
【Secondary outcome】
- 挿管施行中の酸素飽和度の最低値
- 挿管施行中の心拍数の最低値
- 挿管成功までに施行された挿管回数
- 挿管施行までの時間
- 代替デバイスへのクロスオーバー
- 胸部レントゲンでの挿管チューブ位置確認
【データ収集】
- 研究チームのメンバーは、すべての挿管(診療時間外に行われたものを含む)に立ち会い、同時にデータを収集。また電子カルテから新生児に関する情報を収集。また、挿管場所、使用薬剤、挿管医師の特性、喉頭鏡の種類、スタイレットの使用有無、挿管施行時間(喉頭鏡が口腔内に入ってから抜去されるまでの時間)も記録。
【解析計画】
- 先行研究では、直接喉頭鏡による挿管の初回成功率は約40%
- 194例の挿管からなるサンプルを用いれば、α0.05で、ビデオ喉頭鏡の使用により初回挿管成功率が60%に増加することを示す80%の検出力が得られると推定
- 除外を考慮し、サンプルを214に増やした
- 検定方法:カイ二乗検定
Result
【プロトコール、集団】
- 組み入れ基準を満たした246例のうち、20例(8.1%)が除外され、226例が登録。ビデオ喉頭鏡群115例(50.8%)、直視型喉頭鏡群111例(49.1%)が一次解析に組み入れられた。
- 妊娠32週以前が67%(妊娠28週以前は43%)
- 分娩室(陣痛室、手術室)での挿管は29%、NICUでの挿管は71%
- 挿管前投薬は69%
- 合計45人の臨床医が少なくとも1回は挿管を試みた。小児科医32人が合計136回(範囲:1~10回)、新生児科医9人が合計67回(範囲:1~14回)、新生児科医4人が合計11回(範囲:1~8回)であった。
- Doctors in trainingが両群とも挿管の初回試行の大半を行った(ビデオ喉頭鏡群では107回中99回[93%]、直接喉頭鏡群では107回中104回[97%])。
【主要評価項目】
初回挿管に成功した新生児は、ビデオ喉頭鏡群のほうが直接喉頭鏡群よりも有意に多かった。
初回挿管に成功したのは、ビデオ喉頭鏡群では107例中79例(74%;95%CI、66~82)、直接喉頭鏡群では107例中48例(45%;95%CI、35~54)であった(P<0.001)。
【合併症】
- 初回挿管時の酸素飽和度の最低値中央値は、ビデオ喉頭鏡群で74%(95%Cl、65~78)、直接喉頭鏡群で68%(95%Cl、62~74)であった。
- 最初の挿管時に観察された最低心拍数の中央値は、ビデオ喉頭鏡群で153拍/分(95%Cl、148~158)、直接喉頭鏡群で148拍/分(95%Cl、140~156)であった。
- 試験期間中に死亡した新生児は3人で、ビデオ喉頭鏡群の1人(胎児水腫による)と直接喉頭鏡群の2人(1人は極端な未熟児における双胎間輸血症候群によるもの、1人は重度の先天性心疾患によるもの)であった。いずれの死亡例も挿管に関連したものではなかった。
【副次的評価項目】
- 挿管成功までの試行回数の中央値は、ビデオ喉頭鏡群で1回(95%CI、1~1)、直接喉頭鏡群で2回(95%CI、1~2)であった。
- 最初の挿管に成功した時間の中央値は、ビデオ喉頭鏡群で61秒(95%CI、52~66)、直接喉頭鏡群で51秒(95%CI、43~60)であった。
- ビデオ喉頭鏡群では3%(95%CI、0~6)、直接喉頭鏡群では29%(95%CI、20~38)において、指定されていない器具で挿管が試みられた
Discussion
【結果のまとめ】
- 緊急挿管を受ける新生児において、ビデオ喉頭鏡検査のほうが直接喉頭鏡検査よりも初回挿管成功例が多かった。
- この試験の長所には、ビデオ喉頭鏡のブレードが大きすぎるという懸念のために以前の研究では不適格とされていたような小さな新生児を含む、適格な新生児の割合が多かった。
【Limitation】
- 単施設研究
- 手技者と転帰の評価者は群割を認識しており、盲検化できていない
- ビデオ喉頭鏡はCMACのみ使用したので他の喉頭鏡への一般化ができるかどうかは不明
- 小児科や新生児科で研修を受けている医師は、一般的に新生児挿管の経験がないか、あっても限られているが、参加した臨床医が過去に直接喉頭鏡やビデオ喉頭鏡を使って新生児以外の挿管を行った回数に関する情報は収集していない。
- 挿管チューブ挿入の試行回数、喉頭視野のグレード、挿管試行を中止した理由は記録していない。
- 気管内挿管の繰り返しは、新生児における有害事象の増加と関連していることが知られているが、この研究では、有害転帰への影響を検出するのに十分な検出力がなかった
- 新生児挿管時のHFNOの有益性を示した無作為化試験は、われわれの試験が開始された後に発表された。HFNOとビデオ喉頭鏡検査を組み合わせることで、挿管アウトカムがさらに改善する可能性がある。
内的妥当性
無作為割り付け:OK
選択バイアス:なさそう
脱落率:5.3%
マスキング:データ解析を担当した治験責任医師は群間割り付けを把握。また、挿管実施医師、転帰評価者のマスキングもできていない
ベースライン:同等
ITT解析:されている
実際の介入(偏りはないか):方法通り
サンプルサイズ計算:問題なし
報告バイアス:なし
外的妥当性
- アイルランドでの単施設研究
- 32週未満が6割以上のため、32週以降での患者層では不明
- 分娩室(陣痛室、手術室)、NICUセッティングのため、ERの状況では不明だが、わざわざ直視型喉頭鏡でなくても良さそう(※ER医はこのような状況を多く経験するわけではないので、使い慣れているデバイスを使用する方が良いかもしれませんね)
まとめ
新生児でもビデオ喉頭鏡の有用性が出てきました。
挿管全体的な話では、直視型を使う場面がほぼなくなってきますね。この研究は単施設での研究ですが、今後は多施設研究、また合併症も有意差などに関する報告も出てくると思います。
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