動脈瘤性くも膜下出血(aSAH)の管理

動脈瘤性くも膜下出血の管理

Contemporary management of aneurysmal subarachnoid haemorrhage. An update for the intensivist

  • Intensive Care Med. 2024;50:646-664.
  • doi: 10.1007/s00134-024-07387-7.
  • PMID: 38598130

ICMからaSAHのレビューが出ていたのでまとめます。

目次

疫学と集中治療管理の必要性

aSAHの発生率は年齢とともに増加し、女性は男性よりも1.3倍高い(日本でも女性の方が多い)。

患者の12%が病院に到着する前に死亡し、aSAHで入院した患者の90日以内の致死率は約30%である。

機能不良の転帰と死亡の主な決定要因は、早期の脳損傷、破裂した動脈瘤の再出血、遅発性脳虚血(DCI)である。

以下はaSAH後のイベントカスケードである。

After the rupture of an intracranial aneurysm, a cascade of events ensues. Arterial blood under pressure enters the subarachnoid space, inducing swift mechanical effects, such as abrupt increases in intracranial pressure and related cerebral impact. This sets off intracranial repercussions in the form of early brain injury, accompanied by immediate systemic consequences, impacting cardiovascular and respiratory functions. The presence of blood in the subarachnoid space may contribute to cerebral vasospasm, delayed cerebral ischemia, hydrocephalus, and seizures. Systemically, there can be hyperglycaemia, an inflammatory response, electrolyte imbalances (primarily hypo/hypernatremia), and hormonal disturbances. ICP intracranial pressure, CBF cerebral blood flow, NPO neurogenic pulmonary oedema, ECG electrocardiography, BBB brain blood barrier, DCI delayed cerebral ischemia, LV left ventricle

臨床症状と重症度スケール

aSAH患者の臨床重症度を把握するために最も広く利用されている臨床評価尺度は、WFNS scaleとHunt and Hess Scaleである。

<WFNS scale>

GradeGCSMotor dificit
15absent
13-14absent
13-14present
7-12present or absent
3-6present or absent

<Hunt and Hess scale>

GradeClinical pressentationSurvival rate(1)
無症状、軽度の頭痛、軽度の項部硬直11%
中東度から重度の頭痛、項部硬直
脳神経麻痺以外の神経学的失調なし
26%
傾眠状態、錯乱状態、軽度の巣症状37%
昏迷状態、中等度から重度の片麻痺あり
早期除脳硬直、自律神経障害あり
71%
深昏睡状態、除脳硬直あり
瀕死の様相
100%
(1)J Neurosurg. 1968;28:14-20.

Fisher scale、modified Fisher scaleは、くも膜下出血、脳室内出血、実質内出血の程度を定量化し、脳血管攣縮の発生予測と関連している。

group画像所見攣縮発生率(1)
1出血なし24%
2びまん性の出血、あるいは血腫の厚さが大脳半球間裂、島槽、迂回槽、
いずれでも1mmに満たないもの
33%
3局在する血腫、あるいは厚さが1mmを超えるもの33%
4びまん性の出血、あるいはくも膜下出血はないが脳内あるいは脳室内血腫を伴う40%
(1)Neurosurgery. 2006;59:21-7;discussion 21-7.

動脈瘤治療前の早期合併症

早期脳損傷は、くも膜下出血後の最初の数時間に発症する一連の出来事として定義され、さまざまな病態生理学的メカニズムに関連している。出血による脳浮腫、微小循環の変化、酸化および炎症カスケード、血液脳関門の破壊が含まれ、これにより神経損傷が引き起こされる。

頭蓋内動脈瘤の急性破裂後の再出血は、予後不良のリスクを著しく増加させる。最初の24時間以内に患者の約3-6%に発生する。 その後、リスクは急速に減少する。

動脈瘤治療は72時間以内に行う。24-72時間と比較して、24時間以内の修復は転帰不良改善は認めない(Neurocrit Care 21:4–13.)。

血圧目標は、一般に160mmHg以下とされるが、理想的には患者の状態とベースラインの血圧に応じて個別化される必要がある。

水頭症も起こりうるが、意識レベル低下、下方注視(拡張した第三脳室による中脳蓋の圧迫によるもの)、徐脈、高血圧を呈する。

以下はaSAHの頭蓋内合併症とそのマネージメントである。

動脈瘤の治療(クリッピング手術・血管内治療)

前方循環動脈瘤破裂によるグレードの良いaSAH患者は、多くの場合、コイリングとクリッピングの両方に同様に適してるが、コイリングは1年後機能的転帰の改善に関連しているため、一般にクリッピングよりも好まれる。

同様に、高齢の患者などの一部の集団はコイリングで治療することが好ましい場合があるが、平均余命が長く、長期的に再発を防ぐために、クリッピングを考慮することもある。

ほとんどの後方循環動脈瘤は、クリッピングよりも血管内コイリングの方が良い。

動脈瘤の形態(ワイドネックなど)では、高密度ステント(パイプラインなど)を配置することが検討される。

遅発性脳虚血

DCIは、aSAH患者の約30%で、ほとんどが発症後4-14日で発生し、機能障害の主な原因となる。

血管造影により血管攣縮を有する患者の半数のみが虚血症状を発症するが、DCIは血管造影による血管攣縮がなくても発症する可能性がある。広汎性脱分極、局所的な血流の減少による自己調節障害、血管内volumeの現象、微小血栓症などが原因となりうる。その他、DCIのリスクとして女性、喫煙、水頭症、高血糖、糖尿病などがある。

DCIの原因の発見については以下を参照。

DCIのリスク軽減には、

・ニモジピンの経腸投与

→ニモジピンは、血管造影上の血管攣縮を十分に防がないにもかかわらず、梗塞率を低下させ、機能的転帰を改善する(静脈内ニモジピンは経口ニモジピンに比べて低血圧を引き起こすことが多い)。

・hypovolemicおよび低血圧の予防

→induced hypertensionはDCIによる脳梗塞のリスクを軽減しうるが、血圧目標については不明である。一般的にはノルアドレナリンやフェニレフリンが使用される。

がある。

DCIの予防やマネージメントに関してのまとめは以下の通り。

なお、ニモジピンは日本で認可がおりておらず使用できないです。

<血管攣縮の検出>

コンピュータ断層撮影血管造影(CTA)は、血管造影による血管攣縮の検出の感度82%、特異度97%に達する。CT perfusionは、血管攣縮による灌流障害を認識できる可能性がある。経頭蓋ドップラー超音波検査(TCD)は非侵襲的であるが、血管攣縮検出の感度は低く、特異度91%、感度38%である(Neurosurg Rev. 2022;46:3.)。

連続脳波検査(cEEG)は、TCDよりも早くDCIの発症を予測できる。cEEGとTCDを組み合わせると、DCIの診断精度が向上する。aSAHにおけるcEEGの適応は、意識障害、診察所見に変動あり、MCA動脈瘤破裂、high-grade SAH、頭蓋内出血、水頭症、皮質梗塞、が妥当である。以下の記事も参照ください。

<痙攣予防>

抗てんかん薬の予防投与は推奨なし(発作のリスクありそうな人は投与もも検討)。

臨床的にみられた痙攣や、electrographic seizurezでは少なくとも7日間は抗てんかん薬を投与し、その後は遅発性発作があった人や、今後てんかんリスクがある人は長期投与も検討していく。

頭蓋外合併症

神経原性肺水腫は、aSAHの最大23%で発生する(Crit Care Med. 1995 Jun;23(6):1007-17.)。

まとめ

Early brain injury(早期脳損傷)への介入、24-72時間以内の動脈瘤治療、DCI予防、aSAHの頭蓋外合併症治療、など様々な介入、全身管理が必要なのがSAHのICUにおける治療ですね。

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