頸椎損傷が疑われる/確定した患者の気道管理

頸椎損傷が疑われる/確定した患者の気道管理

Airway management in patients with suspected or confirmed cervical spine injury: Guidelines from the Difficult Airway Society (DAS), Association of Anaesthetists (AoA), British Society of Orthopaedic Anaesthetists (BSOA), Intensive Care Society (ICS), Neuro Anaesthesia and Critical Care Society (NACCS), Faculty of Prehospital Care and Royal College of Emergency Medicine (RCEM)

  • Anaesthesia. 2024 May 3.
  • doi: 10.1111/anae.16290.
  • PMID: 38699880.

頸椎損傷が疑われる/確定した患者の気道管理に関するガイドラインが出ていたのでまとめます。

目次

推奨事項

  1. 事前酸素化およびフェイスマスク換気中に頸椎の動きを最小限に抑えるように努める必要がある (グレード D; 弱い推奨)。
  2. 気道を確保するために簡単な操作が必要な場合は、頭部後屈顎先挙上法ではなく、下顎挙上法を使用する必要がある (グレード D、弱い推奨)。
  3. 声門上気道デバイス (SAD) による気管挿管が必要な場合、頸椎の動きを軽減したり、気管挿管を成功させるのに明らかに優れた特定のデバイスはない。 使い慣れた利用可能な声門上気道器具を使用する必要がある (グレード D; 強く推奨)。
  4. 第 2 世代 SAD は、第 1 世代 SAD よりも優先して検討する必要がある (グレード D、強く推奨)。
  5. 可能であれば、頸椎損傷が疑われる、または確定した患者の気管挿管には、ビデオ喉頭鏡を使用する必要がある (グレード A、中程度の推奨)。 特定の種類のビデオ喉頭鏡や特定の種類のブレードを推奨することはできない。
  6. 頸椎損傷が疑われる、または確定した患者に気管挿管を行う臨床医は、頸椎固定下でのビデオ喉頭鏡の定期的なトレーニングを受ける必要がある(グレード D; 弱い推奨)。
  7. 臨床医は、頸椎固定されている患者に気管挿管を行う場合、スタイレットやブジーなどの付属品の使用を検討する必要がある (グレード D、弱い推奨)。
  8. 気管挿管を試みる際には、頚椎カラーを取り外す必要がある。これは、カラーの前部を取り外すだけで簡単に行うことができる。 また、頸椎の動きを最小限に抑えるのにも役立つ (グレード D、弱い推奨)。
  9. 頸椎損傷が疑われる、または確定した患者の気道管理の前に、集学的な計画、準備、人的要因の最適化を考慮すべきである(グレード D; 弱い推奨)。

Gradeは以下の通り。

その他の事項

<前酸素化>

  • HFNO の使用は、頸椎損傷患者の過酸素化に考慮される可能性がありますが、頭蓋底骨折が疑われるか確定した患者には注意して使用する必要がある (グレード D、弱い推奨)。

<輪状軟骨圧迫(cricoid force/cricoid pressure)外的喉頭操作(external laryngeal manipulation)>

  • 輪状軟骨圧迫を行う場合は、適切な訓練を受けた人が実施する必要がある (グレード D、弱い推奨)。
  • 輪状軟骨圧迫を行うと気管挿管が困難になる場合は、やめるべきである (グレード D、弱い推奨)。
  • 喉頭損傷が疑われる場合は、輪状軟骨圧迫は避けるべきである (グレード D、弱い推奨)。
  • 気管挿管中の声門の視野を改善するには、慎重な外的喉頭操作が使用される場合がある (グレード D; 弱い推奨)。

<緊急時前頸部気道アクセス>

  • 患者が気管挿管失敗リスクがある場合、リソースとスキルの組み合わせが適切であれば、麻酔導入前に超音波ガイドを使用して輪状甲状膜を特定し、マークを付けておく(グレード C、弱い推奨)。

<頚椎固定>

  • 外科的に誘発された損傷を有する死体モデルでは、Manual In-Line Stabilisation(MILS) が頸椎の動きの防止に効果がないことが示されており [J Neurosurg Spine 2000;92:201–206.  Anesth Analg 2000;91:1274–1278.]、損傷レベルでの亜脱臼を増加させる可能性がある [J Neurosurg Spine 2001;94:265–270.]
  • MILS やその他の頚椎固定が気管挿管の困難や失敗の発生率を増加させることを考えると、これは重要な考慮事項である [J Neurosurg Anesthesiol 2020;32:57–62. Anaesthesia 1994;49:843–845. Can J Anesth 2009;56:412–418. Anaesthesia 1993;48:630–633.]
  • その上で、MILSを施行するなら、初回挿管成功率において、ビデオ喉頭鏡がMacintosh ブレードよりも優れていそう。
  • ちなみに頚椎カラーをつけたまま挿管することは、開口部の減少により、困難な気管挿管の発生増加と関連している [Anaesthesia 1994;49:843–845. Br J Anaesth 2005;95:344–348.]。
  • MILS の使用を選択する場合、気管挿管が困難なときは、MILS を除去するための閾値を低く設定する必要がある (グレード D、弱い推奨)。

まとめ

頸損患者への挿管はやはりビデオ喉頭鏡がfirstになっていますね。直視型喉頭鏡が二次性脊髄損傷のリスクの増加と関連していることを示唆するデータはありませんが、初回挿管成功率を考えると(初回挿管失敗による低酸素、血行動態などへの影響も考慮される)、圧倒的にビデオ喉頭鏡の使用が望ましいです。

どれも推奨度が低いのは外傷患者におけるstudyが少ないことが大きな原因と思われます。

MILSが実は損傷を悪化させる可能性があることは初めて知りました。挿管困難になりそうならこだわる必要はなさそうですね。

頚椎損傷のある患者では、普段よりもしっかりと事前のリスク評価、back up plan、call for helpなどをやることが大事であると改めて感じさせられました。

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